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監督・コーチ部屋

山下愛トレーナー インタビュー [監督・コーチ]

投稿日時:2013/10/26(土) 00:10rss

4年前、「見学するだけだから」と言って飛び込んだ中大ラグビー部。いつの間にか馴染んでしまった雰囲気に心地よさを感じている山下トレーナー。競技は違えど、社会人アメフトの雄・鹿島ディアーズで「日本一」を経験したトレーナーは、現在の中大ラグビー部になくてはならない存在になっている。トレーナーだから見える、ありのままの中大ラグビー部を語ってもらいました。
 

 

(取材日:平成25年10月22日)





 【監督・コーチ部屋ブログ】山下愛トレーナー インタビュー

『グラウンドから見る、スタンドやベンチの光景。。。ラグビーのトレーナーで良かったと思える瞬間です』
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――中大ラグビー部に携わった経緯を教えてください
 
4年前に、私が前のチーム(鹿島ディアーズ・アメフト)の先輩から「中央大学のラグビー部でトレーナー探しているよ」と声をかけてもらいました。その当時、鹿島が日本一になり、翌年の自分の方向性を模索していたんです。それで高校バスケか大学アメフトかで考えを絞っていましたが、中大ラグビー部が急を要していたので、中村FWコーチにお話を伺いました。
 
――ラグビーという競技は前から知っていましたか?
 
試合を観た事もなかったし、何んとなくの感じしか知らなかったですね(笑)。でも不安はなかったんです。それまでもアメフトしかトレーナーの経験はありませんでしたが、やはり4年間、社会人チームを経験できたのは大きかったですね。そして、私自身もっと成長したいと思っていたので、違うスポーツでも新しいチャレンジになると思いました。社会人と比べて中大ラグビー部は、設備が充実している訳でもなく、ヘッド(トレーナー)がいる訳でもなく。。。これから自分なりに新しい環境を作れるチャンスだと思って、貪欲に競技特性を学んだり、実戦で行動していけば何とかなると思いました。
 
――チームに直ぐ溶け込めましたか?
 
最初にかかわった時に、大きな怪我人がいて結構バタバタしていました。15人制の最初の試合(明治大学戦)から松田監督と話をして、トレーナー(メディカル)の立ち位置を教えてもらい、やるべきことを理解しました。今だから話せますが、前にいたトレーナーさんは、実は私がヘッドトレーナーだと思われていたみたいなんですよ(笑)。私は見学してから、やるかどうか決める心づもりだったんですけどね。それがいつの間にか選手から声をかけられ、リハビリメニューを考えたり。。。流された感じはありましたが、今思えば私もチームの雰囲気に馴染めたから、今の今まで続いているのだと思います。
 
――現在の4年生が1年生の時から携わっているんですね。選手の成長を感じていますか?
 
一人ひとり話したらきりがないぐらい成長していると思います。特に山北(純嗣・キャプテン)は自他共に認める成長ぶりですね。誰が変わって、誰が変わっていないとか全くなく、みんな変わったと思います。津越(航大)だったり、滋田(長喜)、松山(尚由)なんかは、大きな怪我をすることなく現在ラグビーが出来ているのは、意識が大きく変ったんだと思いますよ。
 
――大学生の選手と接していて感じていることはありますか?
 

ここ最近の話になってしまいますが、4年生から「山下さんも成長しましたね!」って言われることがあるんです。その時は「何言ってるんだろう」って照れだったり、選手から言われると思わない言動なので、ちょっとムッとしたんです(笑)。でも、よくよく考えると自分も成長していないといけませんし、言い方はともかく、本当に選手がそう感じて言ってくれた言葉としたら、素直に嬉しいと思います。また、57人の選手と私一人の構図は変わらないのですが、サポートするときは常に「1対1」を心掛けているんです。やっぱり自分の身体の事は、一人ひとり重要なことで、選手に待たせている感覚を持たせないようにするのが私の使命ですし、選手から教わったことだと感じています。
 
――その「1対1」で見えた(教わった)ことはありますか?
 
はい、選手が怪我など身体の不調を訴えてくるときは、絶対に心の不安もあると思うんですよね。昔は、目の前の怪我の治療にしか考えが向かなかったのですが、心の奥底にあるもの(不安)を感じるようにしています。グラウンドで話した些細な会話の中に、選手ならではの悩みも隠れているんです。普段なら流してしまう一言一言を頭の片隅に置いて、怪我の背景をひっくるめて接するようにしないといけないと思いました。また、怪我もせず元気にグラウンドで走りまわっている選手とは、直接関わり合いが無いんですけど、いざという時に治療を施すときは役に立ちますので、しっかり目を配れるようにしていきたいと思います。
 
――競技は違えども日本一を経験をしている山下トレーナーですが、今のチームに共通しているところはありますか?
 
日本一になった年は、日々の練習だったり試合だったり「隙」がなかったですね。今のチーム状況と何となく被る部分が多いんですよ!ただ単純に隙がないっていってもピンと来ないのですが、一番は自分たちの心に隙がないんです。アメフトの鹿島が日本一になった前年は悔しい負けを経験して日本一を獲得しましたから。。。そこから這い上がって勝利を積み重ねていけた最大の理由は、チーム内に隙を作らないことだと思います。
 
――中大ラグビー部も昨年、拓大に勝利すれば大学選手権に出場できたわけですので、悔しい負けを経験しましたね
 
昨年出場していた選手も多く残っていますし、私もグラウンドにいて悔しい経験をしました。今のチームは、あの悔しさが心にあると思います。だから今シーズンは1戦1戦の勝負だと考えていると思います。大学選手権出場が目標なら、今の時点で浮かれてもおかしくないのですが、私たちの目標はもっと上にあるじゃないですか?(国立進出)私個人的にも、周りで見えている人も、感じていると思いますが、日を重ねる毎に良いチームになっていると思います。
 
――トレーナーとしてグラウンドにいる事が多いと思いますが、試合中の気持ちを聞かせてください
 
トレーナーって試合中、選手に一番近い場所にいるんですね。だから選手と一体感になりがちなのですが、トレーナーとしてしっかり線引きをして、客観的にいないといけません。でも、トライを獲ったり、自陣インゴール手前でのディフェンスでターンオーバーした時は、嬉しい表情を押し殺しています(笑)。特にトライ後、選手の輪の中に行くんですが、ニヤニヤしそうな自分を出さないようにしています(笑)。選手はそんな私の気持ちを知る由はないのですが、引き続き知らないでいてほしいです。
 
――試合中に倒れている選手に駆け寄るときの気持ちを聞かせてください
 
今は、倒れ方だったり、倒れる前のプレーを見ているので、駆け寄るときは、どんな状態なのか?を色々考えて近づいていきます。重症の度合は別として、命に関わる怪我でなかったら、冷静に処置は出来るようになりました。昔は、試合中に駆け寄る際に、どうやって近づくかも考えてしまっていたので。
 
――グラウンドから、スタンドやベンチの表情を眺められるんですね
 
はい、試合に集中していますが、得点した後にスタンドだったりベンチに目がいく時があるんです。そこでみんなが喜んでいるシーンを見ると、トレーナーやってて良かったと思いますし、ラグビーのトレーナーって最高だな!と感じます。ちょっとした優越感なんですよね(笑)
 
 
――後半戦に向けての思いを聞かせてください
 
非常にワクワクしています(笑)。私って元来、気持ちが高ぶってしまう人間なんですね。だから必死に平常心でいなきゃって思うんです。また今年は特に、酒井さん(ヘッドコーチ)が就任して、チームが変わってきているんです。酒井さんの手腕は凄いと思うのですが、それ以上に選手たちが変われる要素を持っていたんですよね。酒井さんはきっかけをみんなに与えているだけだと思います。そこのさじ加減がうまいと思います。私が3年間やってきた中で、いくつか変えたいことがあったんです。でも半年接している酒井さんが、私のやりたかったことをさらりとしてしまったんです。嬉しい反面、ちょっと悔しい気持もあるんですよね(笑)。だから私も出来る範囲でチームに影響力ある言動をしていきたいですね。やるのは彼ら選手自身なんです。酒井さんの言葉で、「みんなは周りを変化させている当事者なんだよ」って言っていたんです。その言葉で選手が更に気持ちを高ぶらせていると思います。身体のケアはもちろん、気持ちを楽にさせてあげられる一言を選手にかけてあげたいと思いますね。
 
――その一言をかけてあげる。。。それが山下トレーナーの「プレッシャー」なんですね
 
全くその通りです(笑)
 
――最後に山下トレーナーにとって「中大ラグビー部」とは何ですか?
 
そう言われると思ってました(笑)。そうですね。。。私を育ててくれている場所だと思います。私の今の基礎になっているのは、社会人アメフトチームの経験で、あそこの経験がなければ今の私は無いと思います。その経験があるからこそ、もっと上のレベルを目指そうと思えましたし、心底中大ラグビー部が大好きなんです。社会人アメフトのときの私が「卵」だとすれば、今の中大ラグビー部でトレーナーをしている私は「雛」に成長できているんじゃないかな?って思いますね(笑)

 ――ありがとうございました
 
 
 



 
 
 
(インタビュー&構成:小宅崇)
[photo:CURFC]